DRONE NEWS

2024.01.25

日本初の自動車整備業界での配送だがこれでいいのか?

実証実験は飛ばしておしまいではなく、課題を抽出し、改善方法を示す必要がある。飛ばすだけ飛ばしてよくできました、という気持ちを脱するように取り組まねばならないではないだろうか。

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  • 日本初となる自動車整備業界での部品配送実証実験
  • 実際の運搬能力についての詳細が不透明
  • 社会実装に向けた具体的な方針を示す姿勢が求められる

2024年1月23日、TOMPLA(以下トンプラ)は一般社団法人熊本県ドローン産業推進協議会と連携し、Niterraグループ 日本特殊陶業およびフタバと共に、熊本県御船町で1月15日から18日にかけて自動車整備工場へドローンを使用して部品配送を行う実証実験を行ったと発表した。自動車整備業界でのドローン配送は初めての試み。「必要なときに部品などが届かない」という自動車整備業界が抱える課題の解決とカーユーザーの利便性向上の可能性を確認することを目的とした。
 
今回の実証実験では、部品商フタバの営業所からドローン配送業務を繰り返し行い、各種データの取得を行った。ドローンで運べる部品の種類の見極めや、配送に必要な所要時間の取得を行い、効率的な業務プロセスを検討した。また、異常事態発生時の対処プロセスも確認した。
 
御船町の藤木正幸町長は「ドローン配送実証実験が既存産業の課題を解決し、さまざまなサービスを向上させる可能性を秘めている」と述べた。またフタバの木下和馬取締役は「人手不足を肌で感じていた。実験結果が期待を裏切らず、今後の事業化に向けて様々な可能性を考えられる」と述べた。
 
ドローン配送に関する実証実験では、運んだモノもさることながら、ペイロードについても発表しなくてはならないと考えられる。ドローン配送、物流の実証実験ではただ運べるかだけでなく、どれだけの重さや量を運ぶことができるのかも検証する必要があるはずだ。ところがプレスリリース上には本実証実験における具体的に運んだモノやペイロードが言及されていない。
 
動画がアップされていたので合わせて確認したが、やはり紹介されていなかった。映像では両手のひらで挟んで少し余る程度の大きさの箱などを、コンビニで買える一番大きいビニール袋に入れて積載する様子が映し出されていた。ここから推察すると1kgもないぐらいだろうか。
 
実験の都合上、秘匿する必要のある情報もあるだろうから必ずしもすべてつまびらかにしなくてはならないとは考えない。しかし最も基本的な内容であるはずの運んだモノやペイロードにも言及せず「期待を裏切らなかった」「サービス向上につながる」と称賛するようなコメントだけを発表するのはいただけない。実証実験に関わった企業・自治体・団体は、今回の実証実験を通して明らかになった課題とその解決方法に対する見通しなど、引き続き検証作業を進めるだろう。しかしそれを発信していかなければ「実証実験をやって満足しておしまい」「いつまでたっても実証実験ばかりで社会実装されない」となりかねない。積極的な発信を心がけてほしいし、自治体にはただ協力するだけでなく、実装に向けた具体的な方針を求めるといった強い姿勢を見せてほしい。
 

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