DRONE NEWS

2024.02.01

無資格者の無法に困る北米。日本でそうならないために

無人航空機の技能証明が導入されて1年。制度の振り返りと今後の展望を検証した。北米のドローン企業が直面する課題も示し、国内でどう取り組むべきかを提案する。

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  • 民間資格も一定のエビデンスとされた
  • 一方で、技能証明取得の必要性が高まっている
  • 北米のドローン企業は公衆の受け入れが主な課題に

無人航空機操縦者技能証明(以下、技能証明)の一等無人航空機操縦士試験が始まって1年が経った。

改めて技能証明の制度とできることについて振り返ってみたい。

2015年の航空法改正により無人航空機=ドローンが航空機の仲間となり、飛行させるにあたり様々な法規制が設けられた。例えば空港周辺や人口集中地区といった空域の飛行禁止、目視外飛行や物件投下をするといった禁止の飛行方法だ。

一方で、それらの規制は航空法上の許可・承認を得ることで可能になるともされた。許可・承認をするために国土交通省が提出を求めたのがいわゆる「様式3」と呼ばれる「無人航空機を飛行させる者に関する飛行経歴・知識・能力確認書」だ。10時間以上の飛行経歴や、航空法関係法令に関する知識、操縦技術について、要件を満たしているかをチェックした。

様式3の申請に際し、国土交通省がエビデンスとしたものが、民間のドローンスクールが発行するドローン操縦に関する資格。いわゆる「民間資格」である。2010年代後半から雨後の筍のようにドローンスクールが増えているが「民間資格を得ればドローンがいつでもどこでも操縦できる」というような謳い文句で集客し、2,3日の座学および実技の講習で資格を発行している。

実際のところこの程度の講習で様式3の要件を満たすことができるのかは大いに疑問だが、許可・承認申請の件数は2016年度から2022年度にかけて約7倍に増加。申請の際に民間資格がどの程度提出されていたのかは不明ではあるものの、ドローンスクールで学習し民間資格を得た人々が申請を行ったり、ドローンスクールが受講生の代理申請をしたりすることで(もちろんドローンスクールはその分の費用を別に受講生に請求する)、申請数が増えていったことは間違いない。

2022年12月から技能証明が開始して以来、一等および二等の取得者数は公式に発表されていない。漏れ伝わってくるところによると、二等が数千人に対して、一等は数百人という。一方で日本最大の民間資格と考えられるJUIDAが発行する「無人航空機操縦技能証明証」は2023年12月現在で累計30884人に発行している。国家資格である技能証明よりもいち民間資格の取得者数が多いのが現状だ。

国土交通省の無人航空機操縦者技能証明の紹介サイトでは技能証明を「無人航空機を飛行させるのに必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する資格制度」と明言している。また2025年以降、民間資格が様式3のエビデンスにならないことも公表しており、資格を持たず許可・承認を得るだけで飛行することも不可能になるのではと言われている。つまり技能証明こそ国が認めるドローンの資格であり、技能証明を得ていなければ2025年以降は無資格となりドローンを飛行させることができなくなる可能性さえある。

ここで、シンクタンク「Drone Industry Insights」が2024年1月30日に発表したレポート「Drones in North America」で、北米のドローン企業は挙げた現状の課題を紹介したい。1) 規制、2) 公衆の受け入れ、3) 国内政治があり、その中でも2)については資格のないドローンサービスプロバイダーの普及によって、市場の評判と安全基準に影響を与えていることを懸念しているという。

資格のないプレイヤーが市場を荒らしてしまい、資格のあるプレイヤーが割を食うことは、日本国内でも起こりる。まして前述したとおり無資格になればドローンの飛行させることもできなくなる時代が目前まで来ている。それを踏まえると、ドローンでビジネスをしたいなら、あるいは趣味で飛行させるにしても、やはりなるべく早く技能証明を取得することが肝心だ。

★写真は愛知県豊橋市にある技能証明実技試験会場の最寄りのバス停の時刻表

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