Advanced Air Mobility News

2024.04.23

空飛ぶクルマとリニアで作る未来の山梨 その全容が見えてきた

山梨県では2023年度から空飛ぶクルマの社会実装に取り組みを開始。2040年代には公共交通への導入を目指している。その取組を紹介。

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  • 2030年代に観光分野での導入を目指す
  • 県内の公共交通網が脆弱な山梨県
  • 製造に向けて県内企業の参入余地も

(構成/水野二千翔〈エアリアル・ウェイライター〉)


空飛ぶクルマの導入は全国各地で検討されている。現在のところ、もっとも盛り上がりを見せるのは大阪府や兵庫県、和歌山県といった、開幕まで1年を切った大阪・関西万博を控える関西地方だ。また、四国では瀬戸内海を空からクルーズすることを想定して、愛媛県でも導入を検討している。


東に目を転じると、東京都では自然と便利を科学技術で調和し、持続可能な都市開発を目指す「東京ベイeSGプロジェクト」の一環として「次世代モビリティ・空飛ぶクルマ」が取り上げられ、社会実装に向けたロードマップも策定されている。一方、長野県では高低差が多い県内の移動を容易にするため、空飛ぶクルマの調査・研究が進められている。


東京都と長野県に挟まれた山梨県でも、空飛ぶクルマの社会実装に向けた取り組みが2023年度から開始したことをご存知だろうか。


2024年4月22日、山梨県は空飛ぶクルマが生活に溶け込んだ、未来の山梨県をイメージした動画を発表した。動画のタイトルは、「空飛ぶクルマ×山梨県コンセプトムービー『空を駆ける』」。舞台は2040年の山梨県。「観光」「ビジネス」「日常生活」の3つの利活用の場面から、空飛ぶクルマによってもたらされる価値や可能性の広がりを表現している。


また、この世界観を説明するパンフレットもインターネット上で見られるようにしている。


ではなぜ、山梨県は空飛ぶクルマの活用に取り組もうとしているのか。


東京方面からJR中央本線に乗車していると、勝沼ぶどう郷駅に差し掛かったところで、左手に広大な甲府盆地が目に入ってくる。笹子トンネルをサミットとして山登りをしていた列車は、ここから下り始めていく。この車窓が現れると、山梨県の県都・甲府市に近づいていることが実感できるのだ。


山梨県は甲府市周辺が、平坦な甲府盆地となっている。その周囲は南アルプスをはじめとする急峻な山々が取り囲んでおり、甲府盆地はおおむね直径50kmの円内に収まる。なお県内の山地割合は85%で、全国3位だ。

甲府盆地周辺(画像出典:Google Map)


この平坦な土地が、山梨県で空飛ぶクルマを導入するきっかけのひとつとなった。


(以下では、山梨における空飛ぶクルマ産業への参入方法、実装に向けた動きなどについて紹介します)

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