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2024.05.07

新東京ドームへは空飛ぶクルマで!三井不動産による築地再開発

旧築地市場の再開発がいよいよ開始。イメージパースには空飛ぶクルマの姿も。空のモビリティに馴染みが薄い三井不動産が、なぜ空飛ぶクルマに取り組むのか。

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  • 旧築地市場跡は現在更地に
  • 三菱地所や野村不動産と比べ空飛ぶクルマの活用では影が薄い三井不動産
  • トヨタグループのトヨタ不動産が参画する意味とは

(構成:水野二千翔〈エアリアル・ウェイライター〉)

4月22日、東京都中央区にひろがる旧築地市場跡地の再開発について、大きな動きがあった。


大手不動産デベロッパーの三井不動産を代表企業とするトヨタ不動産、読売新聞グループ本社など11社が参画するコンソーシアムが、東京都が募集する「築地地区まちづくり事業」の事業予定者に選定されたと発表された。


鮮魚などを取り扱う公設の卸売市場として80年以上に渡って開設された旧築地市場。しかし老朽化によって江東区の豊洲へ移転が決定し、2018年10月に閉場した。建物を取り壊し更地となったあとは、2021年に開催された東京2020 夏季オリンピックで選手らを輸送したバスなどの駐車場として活用。現在は約19ヘクタールという、都心でほかに類を見ない広大な空き地となっている。

旧築地市場跡は東京2020 夏季オリンピック輸送のため全国から集まったバスの駐車場として活用された(2021年7月31日。撮影:水野二千翔)


同日発表されたプレスリリースでは、再開発計画の概要として5点があげられている。「新東京ドーム」などともいわれる5万人収容のマルチスタジアム建設などが注目を集めているが、本稿では5点のうちのひとつ「陸・海・空のモビリティが乗り入れ可能な広域交通結節点を整備し、築地場外市場と連動したにぎわいと交流を促進」について、考察したい。

陸・海・空のモビリティが乗り入れ可能な広域交通結節点(イメージパース)(出典:三井不動産プレスリリース)


ここで取り上げられている「空のモビリティ」は言わずもがな、空飛ぶクルマを示している。築地まちづくり事業は最大で2038年度まで予定されている長期的な取り組みだ。2025年の大阪・関西万博以降、各地で空飛ぶクルマの実用化の動きに向けた取り組みが加速していくと想定される。これを踏まえ、「空」のモビリティの代表である空飛ぶクルマの離着陸に対応可能にすることは合理的といえる。整備が予定される臨海地下鉄や、晴海方面を結ぶバス路線の東京BRTといった「陸」、隅田川や東京湾を行く船による「海」を活用するモビリティも加わり、これまでにない姿の交通結節点が出現しそうだ。


大手不動産デベロッパーによる、まちづくりに空飛ぶクルマを組み合わせる取り組みでは、三菱地所と野村不動産が先行している。三菱地所は2022年度から東京都の「都内における空飛ぶクルマを活用したサービスの社会実装を目指すプロジェクト」に参画。2024年2月にはヘリコプターを「仮想」空飛ぶクルマとし、東京駅前の新丸ビル上空からゆりかもめ青海駅南側特設会場や江東区の東京ヘリポートを結ぶ実証運航を実施した。丸の内を空飛ぶクルマが行き交うCMを制作するなど、積極的な姿勢をアピールしている。

三菱地所らが手掛ける空飛ぶクルマについて


野村不動産は2023年度から東京都の「東京ベイeSGプロジェクト 令和5年度先行プロジェクト」にて、空飛ぶクルマ用の浮体式ポートの研究を行っている。2024年5月21日まで行われているイベント・SusHi Tech Tokyo 2024では、浮体式ポートの実機(縮小版)が展示され、その上にドローンが離着陸するデモンストレーションを行い、研究成果を発表している。


2社と比較すると、三井不動産は空飛ぶクルマに関してこれまでに目立った動きがない。築地地区まちづくり事業に空飛ぶクルマを組み合わせたのは、やや意外な印象を与える。


だが、同社が空のモビリティにまったく関わっていないというわけではない。


(以下では、三井不動産の空のモビリティに関する取り組み、構成企業から読み取れる今後の築地地区まちづくり事業の行方について紹介します)

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