- GNSSスプーフィング(なりすまし)対策が重要
- 物を運ぶとこだけに囚われない実証実験を
- セキュリティ対策や離着陸場の整備も重要
【ドローン物流連載】シリーズは全4回の記事で、現在の国内におけるドローン物流の状況や今後の展望について紹介します。
期待が集まるドローンによる物流や物資運搬。第3回では採算をどのように取るか、その取組についてレビューした。
第4回では、物資運搬ドローンのセキリティについて紹介。また、物資運搬ドローンの活用を広げようとする名古屋鉄道の先進的な取り組みについてもレビュー。ドローンによる物流や物資運搬が今後目指すべき方向について総括する。
2024年1月1日~2月13日までの間に行われた物資輸送や物流にドローンを活用するための実証実験のうち、1件興味深いものがある。2月6日に埼玉県秩父市でコア、ACSL、楽天グループが行ったのは、ドローンに搭載されたGNSS受信機の位置を狂わせる「GNSSスプーフィング(なりすまし)対策」に関する実証実験だ。
ドローンは自機の位置測定にGNSS(全地球航法衛星システム)からの電波を使用している。だが、GNSS受信機を狂わせて位置測定を不可能にする、GNSSスプーフィング(なりすまし)が問題となっている。対策方法としては、準天頂衛星システム「みちびき」が配信する電子署名情報と受信機が持つ公開鍵を組み合わせ、正しい情報を得ているか確認する手法があり、今回の実証実験でその検証が行われた。
実験では秩父市の「道の駅大滝温泉」で積み込んだ救援物資を同市大滝総合支所へ自動航行で運搬中、GNSSスプーフィング攻撃を受けたと想定。「自動航行が継続できるか」「自動航行が継続できず手動操縦に切り替えた場合、安全に着陸できるか」について検証が行われた。
実際にGNSSスプーフィング電波を発すると電波法に抵触することから、有線で受信機に妨害信号を送るという疑似環境での実証ではあったものの、無事にGNSSスプーフィング電波に対応できた。
今後、物流ドローンが頻繁に市街地を飛び交うようになると、上述した乗っ取りや、何らかのトラブルによる制御不能な状況も起こると予想される。
現在の実証実験では物を運ぶことに囚われ、やや視野狭窄になっている。実際の運用ではセキュリティ対策や、物流拠点として使用可能な離着陸場の整備も必要になる。実装へ向けた具体的な整備案をまとめる際には、合わせて方向性を示してほしい。
最後に名古屋鉄道のドローンに関する取り組みを紹介して、この連載をまとめる。
同社は愛知県名古屋市と衛星都市を放射線状に結ぶ鉄道路線444.2kmを運営。鉄道事業以外にも注力しており、ドローン事業では「名鉄ドローンアカデミー」を2018年6月に開校。2022年度からはドローンを活用した鉄道設備点検も行っている。
(以下では名古屋鉄道が行った2件の実証実験と、今後のドローンによる物流や物資運搬が目指す方向について紹介します)