DRONE NEWS

2024.04.23

日本無線と三菱総合研究所のドローン衝突回避技術報告書がISOから公開

NEDOの委託事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」での成果をもとにまとめられた。

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  • 無人航空機用衝突回避システムに関する規格の要求事項の根拠と位置付け
  • NEDOは2017年度から無人航空機の衝突回避技術の開発を目的とする研究を実施
  • 6ステップからなる基本的な衝突回避手順を規定

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」での成果をもとに、日本無線と三菱総合研究所は、無人航空機の衝突回避技術に関する国際標準化機構(ISO)の技術報告書「ISO/TR 23267:Experiment results on test methods for detection and avoidance (DAA) systems for unmanned aircraft systems」(以下、ISO/TR 23267)を取りまとめた


2024年4月15日、技術報告書「ISO/TR 23267」が公開に至った。ISO/TR 23267は無人航空機用衝突回避システムに関する規格「ISO/DIS 15964 Detection and avoidance system for unmanned aircraft systems」(以下、ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられる。新たな国際標準の速やかな規格開発につながり、無人航空機の社会実装の加速が期待される。

図1 NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験イメージ


一般にドローンと呼ばれる小型~中型の無人航空機は、既に農業分野などで利用が広がっている。さらに、災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどの用途での活用に、大きな期待が寄せられている。一方で、他の航空機との衝突をどのように回避するかが無人航空機の安全利用における喫緊の課題だ。 


NEDOは2017年度から無人航空機の衝突回避技術の開発を目的とする「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」を開始した。省エネルギー社会の実現を目指し、【1】ロボット・ドローン機体の性能評価基準等の開発、【2】無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発、【3】ロボット・ドローンに関する国際標準化の推進、【4】空飛ぶクルマの先導調査研究の4項目で構成されたプロジェクトで、2021年度までにさまざまな実証実験を実施。衝突回避技術に関する複数の研究開発成果を公開している。


2023年度より、日本無線と三菱総合研究所が主要な研究開発成果を取りまとめ、日本発として提案したISO/TR 23267が2024年4月15日に公開された。


現在、無人航空機システムの国際標準化を担当するISO/TC 20/SC 16では、レーダー、光学センサー(カメラ)などを無人航空機に搭載した衝突回避システムに関するISO/DIS 15964を開発中だ。発行された技術報告書「ISO/TR 23267」は、ISO/DIS 15964の要求事項の根拠と位置付けられるものになる。


無人航空機の衝突回避に関しては、衝突回避のCONOPS(Concept of Operations:運用構想)として、2023年10月に無人航空機の運航手順の規格である「ISO 21384-3:2023 Unmanned aircraft systems Part 3: Operational procedures」(以下、ISO 21384-3:2023)に新たな章を追加し、6ステップからなる基本的な衝突回避手順を規定した。さらに、この6ステップの衝突回避手順を具現化する衝突回避システムとしてISO/DIS 15964の規格が現在開発されている。


今回公開された技術報告書「ISO/TR 23267」は、ISO/IEC 専門業務用指針2023年(第3版)の3.3TR(技術報告書)で示される「関連するIS(国際規格)に関する特定の要求事項に係る根拠を提供するため」を目的として、NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験の中から重要な成果を取りまとめたものだ。


具体的には、無人航空機の衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエアを本文に提示し、これを裏付ける根拠として各種実証実験結果などをAnnex(別紙)で示しつつ、引用先をBibliographyに明記する構成とすることで、レーダーと光学センサー(カメラ)を備えた機体による衝突回避システムの手順について説明している。


また、衝突回避のモデリングとシミュレーション、機器単体の定量的評価試験、ハードウエア・ソフトウエアを試作搭載した飛行試験へとステップアップするテスト方法を解説することで、要求事項の根拠となる衝突回避CONOPSの6ステップにおける各種センサー機器の役割や探知・認識距離などを明示している。

図2 無人航空機と有人航空機の衝突回避6ステップ
表1 衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエア
表2 衝突回避試験における探知・認識距離

<各社の役割>
日本無線:衝突回避システムの評価試験と飛行実証
三菱総合研究所:技術報告書(案)の作成


日本発の技術報告書「ISO/TR 23267」が公開されることで、世界各国の無人航空機に関する製造者、販売者、購入者、顧客、業界団体、ユーザー、規制当局などステークホルダーが、個別に進めてきた衝突回避システムに対して、共通概念が提供されることが可能となる。また、現在開発が進められているハードウエア・ソフトウエアの国際規格(ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられることで、早期の国際標準化を推進し、将来に向けた国際的な無人航空機の社会実装への貢献が期待される。


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